熊本県スポーツ協会

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藤本貴大選手インタビュー

「正直、ほっとしました」
レースを終えて真っ先に彼が笑顔で口にした言葉。
 第59回国民体育大会冬季大会・スケート競技会最終日となった2月1日、成年男子ショートトラック500m・A決勝、長野五輪金メダリスト 西谷 岳文(大阪府)やショートトラックの第1人者 寺尾 悟(愛知県)ら強豪が名を連ねたスタートリストの中に、熊本県代表・藤本 貴大(山梨学院大学・文徳高等学校出身)の名があった。
 これまで出場した高校3年間、少年の部で入賞した戦歴を誇るも、オリンピック・ワールドカップ等代表選手がズラリと並ぶ成年のエントリー選手たち。そのスタートに至るまでドラマがあった。前日に行われた1000mでは、期待に応え、1回戦を難無く勝ち上がるも、迎えた準々決勝に波乱が待っていた。
 レース序盤、藤本は好位置から主導権を握って先行し順調に周回を重ねていた。しかし、勝負どころで末脚を欠いてしまい、コース取りに失敗して痛恨の失格。小寺武大(愛知県)ら有力選手が相手だったとはいえ、得意の種目だっただけに悔しさも相当あったことだろう。

 レース後、VTRを真剣に覗き込むと、「考えすぎましたネ。明日は気持ちを切り替えて頑張ります。」と自分に言い聞かせるようにコメントした彼は、ロッカールルームへ笑顔で消えていった。
 この落選によって、ナショナルメンバーが揃う成年のメンバーでは500Mも相当厳しいのでは!?・・と、選手団の中には、高まる期待とはうらはらに、不安も入り混じった雰囲気を抱えたまま、最終日を迎えることになる。
 しかし、そんな空気も翌日の予選のレースで一掃してしまう。
 藤本はスタートから飛び出すと、冷静なコーナーワークで他を寄せ付けず圧倒。続く準々決勝も好位置を取りきって、西谷に続く2着でゴール。圧巻だったのは準決勝レース、西谷相手にスタートから、積極果敢に先行し、押し切って1着でゴール。見事A決勝へ進出した。A決勝には学生から藤本1人の進出に本人は「西谷さんが流して差さなかっただけですよ。」と謙遜してみせたが、「地力がついてきている証拠。決勝では何が起こるかわかりませんよ。」と県スケート連盟の鷲崎前理事長。

 今シーズンに入り、国外大会など代表レベルの大会に派遣されて結果を積み重ねていることや昨年4月に進学した山梨学院大学の環境が藤本をさらに大きく飛躍させているという。
 藤本本人も「大学に入り、練習環境はすごく恵まれていると感じています。日本一の環境といっていいと思いますネ。身近に強いライバルがいることはいい刺激になりますし…。」
 魚が水を得るような、整った環境が、藤本を精神的にも、肉体的にもいい方向に導いたのかもしれない。
 いよいよ迎えた決勝。不運にも抽選でアウトコース5番手からのスタートポジション。
 スタートでは苦戦が予想されたが、5番手のポジションから冷静にレースを見極めて、勝負どころで計ったよ

続きフィニッシュ。3位入賞となった。
 今回の入賞は本県に競技得点6点をもたらすとともに、総合成績で天皇杯26位(スケート・アイスホッケー競技会終了時)に押し上げ、藤本自身4年連続の入賞は「昨年までの実績も素晴らしいが、成年での3位入賞は大きな価値がある。これからにつながる立派な成績ですよ。」(奥村団長・県体協専務理事のコメント)と述べたように、本人はもとより、これから開催される夏季大会、秋季大会にも大きな力を与えたことはいうまでもない。

 「準決勝で逃げ切ったことは少なからず自信になりました。小さい頃から西谷さんや寺尾さんは憧れの人でしたから・・・。この大会は自分でも驚くほど冷静にレースに臨め、いろんな意味で自信がついた大会でした。」
 インコースなら優勝できたかも?の問いには
「確かにチャンスは広がったかもしれませんが(笑)しかしそんなに甘くないハズ。レースはどうなるかわかりませんので・・。昨日の1000mの後は、気持ち切り替えますって言ったものの・・・結構引きずっていまして、熊本にいる横田コーチに電話で話して、ようやくリセットできました。500mは結果3位ですが、自分自身では納得しています。」と無邪気にレース後、語ってくれた。
 距離別選手権、全日本選手権を経て無事に代表入りすれば3月開催の世界選手権と今後大事なレースが続く。本人曰く「1回ではマグレっていわれそうなので、常に代表入り出来るような実績を積み上げたい。そのためには今シーズンは自然と気合が入ります。期待してください♪」と。
 国体終了後の翌週2月7日から開催された、全日本ショートトラック距離別選手権では「有言実行」で500mにおいて4位入賞を果たしてくれた。
 近い将来、世界選手権はもとより、本人は身近な夢と語っていた「オリンピック」という桧舞台でゴールを走り抜ける彼が見られるかもしれない。

藤本貴大選手プロフィール
2004年3月現在
学   校 山梨学院大学1年(文徳高等学校出身):19歳
身長・体重 170cm 62kg.
足のサイズ 26cm
握   力 右50kg.・左43kg
趣   味 カラオケ・ウィンドウショッピング
スケートを始めたきっかけ 父親に勧められて
尊敬する人 寺尾選手・西谷選手
好きな食べ物 杏仁豆腐
嫌いな食べ物 炒めたナス(食感がだめ)
好きなタレント 井上和香さん・小野真弓さん

 

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